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エッセイ 「私とADA」皆様からの”ご応募作品」東京都 E.H様

電光掲示板が連日猛暑を伝えたあの夏、私は暑さと汗から逃げる一心で地下街へと足を運んでいた。
階段を下りたその時、私は通路の脇に何か緑色の四角い物の存在に気が付いた。
「ん?なんだろう?」
近づくと、それは緑色の草と水で満たされた大きな水槽だった。
「わっ!すげーなぁ。」
人々が行きかう中、私はその緑色の四角いガラスの箱を眺めていた。
水草だけだと思っていたが、よく見ると石や木を組んで魚やエビも入っている。
水槽には店の案内が貼ってあり、私はそこなら少しは涼めるかなと足を向けた。
案内に沿って進むと、それらしきお店見えた。
「ここかな…。」
「えっ!」
私はビックリして立ち止まってしまった。
そこには1メートル以上もある大きな水槽に水草が生い茂り、魚達が泳いでいて私の知っている熱帯魚屋ではなかった。
写真OKと記載されている。私は数枚その水槽の写真を撮っていた。
店内にも水草で飾られた水槽が並んでいて、そのどれもが素晴らしかった。その中で特に目を引いた一つにガラスで出来たパイプが水を吐き出し、水面を揺らしていたものがあった。
「キラキラしてきれいだな。」
「ADA?リリーパイプ?なんだ?ADAって?アダっていうのかな。」
「ADAフルセット水槽〇〇万円」
「○○万!」
流石に高いと思ったが、周りを見ると小さな水槽はそれほど高くないようだ。
「そういえば実家でも金魚飼っていたなぁ。」
と昔を思い出しながらパンフレットを手に取ってお店を後にした。
来た道を歩いている頃には夏の暑さと汗は既に無く、私は部屋の何処に水槽を置けるかと考えていた。そもそも家族の許可は下りるのか。
そうだ。老舗の和菓子屋でお土産を買って帰ろう。
それをみんなで食べて幸せな気分の余韻に浸っているその時、私が写した水槽の写真を見せよう。みんな賛成してくれるに違いない。
私は密かにほほ笑みながら、あの夏の夕方、私は地下街を歩ていていた。

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